駐車場内の交通事故における過失割合Q&A

目次

駐車場内の交通事故における過失割合について

Q1. 私は,先日,近所のショッピングセンターの駐車場で,他の自動車と接触事故を起こしてしまいました。知人からは「駐車場内の事故の場合,過失割合は50:50になる。」と言われたのですが,そうなのでしょうか。

A1. 確かに,保険会社はそのように提案してくることが多いようです。しかし,一口に駐車場といっても,状況は様々です。過去の裁判例では,駐車場内での交通事故であっても,その状況に即した判断をしているものが多数あります。必ずしも過失割合が50:50になるわけではありません。

Q2. では,駐車場内の交通事故の場合の過失割合も,道路の場合と同じように考えて良いのでしょうか。

A2. 駐車場は,自動車を止めて人が乗降することを目的とした敷地です。通行を主な目的とする道路とは,自ずからその性質が異なります。そのため,過失割合算定の基礎となる自動車や歩行者の注意義務についても,通常の道路とは別に考えるべきです。

Q3. そもそも,駐車場内の通路は,「道路」なのでしょうか。駐車場内で高速走行したり,一方通行を逆走したりしたら,交通違反に問われるのでしょうか。

A3  道路交通法が定める道路には,国道などの通常の道路の他に「一般交通の用に供するその他の場所」が含まれます。そして,最高裁は,「たとえ、私有地であつても、不特定の人や車が自由に通行できる状態になつている場所は、同法上の道路であると解すべき」としています。そのため,私有地である駐車場であっても,ショッピングセンターの駐車場のように,不特定多数の人が自由に通行できる場所は,道路交通法上の道路にあたり,交通違反に問われる可能性は十分にあります。

Q4. その駐車場が道路交通法上の「道路」にあたるかどうかによって,駐車場内での交通事故の過失割合は変わってくるのでしょうか。

A4. 理論上は,道路交通法上の「道路」に該当する駐車場と,そうでない駐車場とでは,求めるべき注意義務が異なると考えることもできます。しかし,現在の実務上は,交通取締りと,事故当事者間の過失の分担とは別の問題であるとして,過失割合を検討する上では,その駐車場が道路交通法上の「道路」にあたるかどうかは,重視されない

のが一般的です。

Q5. では,具体的に,駐車場内の交通事故における過失割合は,どのように考えれば良いのでしょうか。

A5. 駐車場内では,駐車場特有の態様として,通路から駐車スペースへ入ろうとする自動車や駐車スペースから通路へ出ようとする自動車,乗降をしている自動車などがいます。そのため,そのような特殊な状況があることを踏まえて,個別に見ていきましょう。

Q6. 駐車場内の通路における出合い頭の事故の場合は,過失割合はどうなりますか。

A6. この場合,過失割合は,原則として50:50になります。ただし,一方の通路が明らかに狭いような場合や,一時停止違反や通行方向表示違反等をしているような場合には,10~20%程度の修正をします。

Q7. 通路を進行している自動車(進行車)と駐車スペースから出てこようとする自動車(退出車)との事故の場合はどうなりますか。

A7. この場合,駐車スペースから出る車の方が,より注意すべきであると考えられていますので,過失割合は,進行車:退出車=30:70が原則となります。違反をしている車に10~20%程度の加算をするのは,A6.と同様です。なお,この過失割合は,退出車が前進して退出しようとしている場合であっても,後退して退出しようとしている場合であっても変わりません。

Q8.  通路を進行している自動車(進行車)

と駐車スペースへ入ろうとしている自動車(進入車)との事故の場合はどうなりますか。

A8. この場合,進行車の方が,より注意すべきであると考えられています。駐車場は駐車をすることが主目的ですので,進行する側が,駐車をしようとしている自動車に注意して進行するべきとされているのです。そこで,この場合の過失割合は,進行車:進入車=80:20が原則となります。違反をしている車に10~20%程度の加算をするのは,A6.と同様です。なお,この過失割合は,進入車が前進して進入しようとしている場合であっても,後退して進入しようとしている場合であっても変わりません。なお,一旦駐車スペースに入れた後に,ハンドルの切り返しのために再度駐車スペースから出てくる場合は,Q7.の場面と同様と考えます。

Q9. 駐車スペース内で,自動車と歩行者の事故が起きた場合はどうなりますか。

A9. 駐車スペースは,自動車が出入りをする場所であると同時に,車からの乗降をする場所でもありますから,自動車を止めようとする人は,当然に歩行者がいることに注意すべきといえます。また,他方で,歩行者にとっても,駐車スペースは,自動車が入ってくることが想定されますので,歩行者も自動車に注意すべきといえます。そこで,この場合の過失割合は,自動車:歩行者=90:10とされるのが原則です。歩行者の過失については,歩行者が児童,高齢者,身体障害者等である場合,-5~-10%の修正がされます。

Q10. 駐車スペースでない通路で,自動車と歩行者の事故が起きた場合はどうなりますか。

A10. この場合も,Q9.の場合と同様,自動車:歩行者=90:10が原則となります。もっとも,歩行者の飛び出しがあった場合や歩行者通路表示上であった場合などは,それぞれ過失割合を10~20%増減します。

Q11. 駐車スペースに入ろうとしている自動車同士の事故の場合はどうなりますか。

A11. このような場合,基本的には両者が同じ義務を負っているといえますので,Q6.の場面と同様に考えて50:50を前提にして考えて良いかと思います。

 

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